汚水処理技術の事例紹介と評価

[浄化処理(ふん尿混合)]

1.処理施設の概要(企業からの情報に基づき作成したものである)

企 業 名

株式会社 戸上電機製作所

処理方法

活性汚泥変法(膜分離法)

適応畜種

牛舎汚水

問い合わせ先・担当者

環境事業部 石田稔
〒840-0802 佐賀市大財北町1番1号
TEL:0952-25-4135 FAX:0952-24-9409
技術を参照できるURL:http://www.togami-elec.co.jp
お問い合わせ:info@togami-elec.co.jp

処理施設の概略フロー

処理施設の概要

 ふん尿混合汚水を二段階の固液分離にて負荷低減を行う。脱離液は曝気槽にてBOD 除去を行い、膜分離槽にて
MLSSと処理水に分離される。余剰汚泥は畜舎の臭気低減を目的に畜舎へとフラッシングし、ふん尿とともに脱水される。

処理施設の特徴

  1. 搾乳牛特有のふん尿混合汚水で高負荷のため、高分子凝集剤を用いて二段階の固液分離を行って負荷低減を図っている。結果、曝気槽投入BOD が低減され、安定した処理が行われる。
  2. MF 膜による分離処理を行っているため、MLSS 濃度を高く設定することができ、BOD 除去性能に優れる。
  3. MF 膜処理のため、処理水SS は常に1mg/L以下であり、安定した処理水を放流できる。
  4. 曝気槽、膜分離槽は3 系列( 並列運転) であり、メンテナンスを考慮した片肺運転ができる。
  5. 余剰汚泥は固液分離の汚水と混合され、牛舎内を洗い流すフローとしているので、農場全体の臭気が少ないとともに、清掃作業の省力化となる。
  6. 運転は水位計によるシーケンサ自動制御であるので、管理が簡単である。
  7. 曝気槽は間欠運転を行い、ランニングコスト低減、窒素低減を行っている。
  8. 大規模向けの処理施設として適応しやすい。

処理施設の実施状況

1. 畜種、飼育規模 
:搾乳牛ふん尿汚水、搾乳牛1,000 頭
2. ふん尿の排出方法 
:ふん尿混合スラリー
3. 希釈倍率 
:希釈なし
4. 処理水の処置 
:全量場内処理(牛舎冷却用細霧利用ほか)または放流

排出汚水量・BOD 量

1. 排出汚水量 
:592 m3/日(592L/頭・日)
2. 排出汚水BOD 濃度 
:5,422kg /日(1,5.4kg /頭・日)
3. 排出汚水B O D 量 
:9,156mg/L

固液分離の方法

1. 固液分離機の機種 
:ベルトスクリーン型(1 次)脱水機、ベルトスクリーン型(2 次)脱水機
2. 凝集剤の使用 
:牛舎ふん尿汚水および余剰汚泥に高分子凝集剤(添加量2.5%/ SSkg)
3. S S 除去率 
:ベルトスクリーン(1 次)(55%)、ベルトプレス(2 次)(80%)
4. 分離固形物水分 
:ベルトスクリーン(1 次)(75%)、ベルトプレス(2 次)(87%)

高度処理方法

浸漬型液中膜による吸引ろ過

水質処理性能

曝気槽BOD 容積負荷量:0.9kg /m3・日

曝気槽投入汚水 曝気槽処理水 高度処理水 除去率
SS mg/L 2,450 1 以下 99 以上
COD mg/L 2,450 400 84
BOD mg/L 2,760 10 99 以上
T-N mg/L 260 70 73
T-P mg/L 26 9 65

処理経費

1. 処理施設の建設費 
:建設費合計(30,000 万円)、年償却費(1,800 万円)
2. 維持管理費 
:維持管理費の合計(電力費+薬品費+修繕費= 3,090 万円/ 年)
3. 高度処理経費 
:上記に含む
4. 処理経費の合計 
:搾乳牛1 頭当たり(4.89 万円)

導入に当たっての留意点

  1. 高度処理に使用している膜分離用平膜の寿命が公称5 年といわれ、膜交換費用がかかる。
  2. MF 膜分離による運転は膜詰まりに対するメーカーのノウハウが必要であり、それにより交換頻度が異なる。

2.評価結果(評価委員会による評価結果)

総合評価

  1. 1000 頭といった大規模酪農にも適用可能な事例として貴重である。
  2. 2 段階のベルトスクリーンを通すことにより固形物は良好に分離でき、負荷の低減化が可能である。また、間欠ばっ気を採用していることから、窒素・リンの低減化も可能である。さらに、膜分離を採用していることから、固形物濃度や有害微生物の流出が防止できる。
  3. ばっ気槽と膜分離プロセスを3 系列で組むことによりメンテナンスがしやすく全体的には酪農のふん尿混合汚水およびパーラー汚水の良好な浄化システムとして仕上がっている。
  4. ベルトスクリーンおよび浸漬膜の定期的メンテナンスは処理性能維持に肝要である。
  5. ふん尿混合スラリーの膜分離処理であるが、処理経費は全処理方式をとおしてかなり高い。

評価チャート

評価年月日

固液分離機

膜分離処理水

浄化槽全景
(縦方向に2 マスづつばっ気と膜分離槽として使用)
現在、膜分離槽は右側より三系統稼働中

ホールディングエリア向け
フラッシュ水貯留タンク