汚水処理技術の事例紹介と評価
[メタン発酵処理(液肥利用)]
1.処理施設の概要(企業からの情報に基づき作成したものである)
企 業 名
コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド コーンズ・バイオガス
処理方法
メタン発酵処理
適応畜種
乳牛ふん尿
問い合わせ先・担当者
〒060-0806 北海道札幌市北区北6条西1丁目4番2
TEL:011-758-6611 FAX:011-758-5331
お問い合わせ:biogas@spr.cornes.co.jp
処理施設の概略フロー

処理施設の概要
牛舎から排出されたふん尿は、プレピットに集められる。ふん尿はプレピットから自動的に発酵槽に送られて、約20 日間のメタン発酵過程を経てバイオガスと消化液となる。生成したバイオガスはガス貯留脱硫槽で生物脱硫され、デュアルフュエル型バイオガスエンジン(CHPS)で電力と熱エネルギーに変換される。また、消化液は液肥としてほ場に還元している。
処理施設の特徴
- 牛舎からのふん尿はプレピットに集められてから自動的に発酵槽に送られる。
- ふん尿に含まれる砂などの夾雑物はスラッジ排出ポンプで発酵槽外に排出される。
- 生成したバイオガスは一日に一回ガスアナライザーによって自動的に成分(メタン、硫化水素、酸素濃度)が測定される。
- プラントの運転はほとんどが自動化されており、通常は一日に一回の確認(ふん尿投入量、発酵槽温度、CHPS 運転時間、バイオガス成分の記録)が必要なだけである。
処理施設の実施状況
- 1. 畜種、飼養規模
- :搾乳牛210 頭。
- 2. 糞尿排出方法
- :ふん尿混合。
- 3. 希釈倍率
- :無希釈。
- 4. 処理水の処理
- :液肥利用。
排出汚水量・BOD 量
- 1. 排出汚水量
- :13 m3 /d(62kg/ 頭・d)。
- 2. 排出汚水BOD 量
- :3.25 〜 3.64×108mg。
- 3. 排出汚水BOD 濃度
- :2.5 〜 2.8×104mg/L。
固液分離の方法
なし
ガス発生量
有機物負荷量:4.6kg/ m3・日
投入有機物当たりのガス発生量:0.38 m3 /kg 有機物
処理経費
- 1. 処理施設の建設費用
- :1 億2 千万円。
年償却費:1 億2 千万円× 0.9 ÷ 15 年= 720 万円/ 年
- 2. 維持管理費
- :エンジンメンテナンス費用70 万円/ 年
補助燃料費用90 万円/ 年、町村農場では発電した電力を自家消費しており、その分の電気代が節約されている。また、RPS 法による発電所に認定されており、日本自然エネルギー株式会社に委託して、自然エネルギーとしての価値をkWh あたり2.8 円(年間約84 万円)で売却している。運転経費には、この点に関して考慮する必要がある。
- 3. 乳牛1 頭当たり処理経費
- :4.2 万円
導入に当たっての留意点
メタン発酵によるふん尿処理では、有機物濃度は減少し、メタンが生成するが、全体の量は減少しない。つまり、投入量と同量の消化液が生成するので、この消化液の処理が問題となる。特に北海道以外の地域ではこの点に関して十分に検討を行う必要がある。
2.評価結果(評価委員会による評価結果)
総合評価
- メタン発酵消化液を農地還元するための圃場面積が必要である。
- 乳牛ふん尿には敷料、粗飼料残渣、未消化繊維などが含まれているが、それらの除去機構がないためポンプや配管、熱交換器の閉塞、発酵槽における沈殿物の堆積が心配される。
- 中温発酵法としては非常に高い有機物負荷量(4.6kg/ m3・日)が設定されているため過負荷障害がおこりやすいので、運転には十分な注意が必要である。
- 投入有機物当たりのガス発生量が乳牛ふん尿としては過大に設定され、発生ガスのエネルギー回収効率も多めに設定されているためエネルギー収支には十分な注意が必要である。処理経費は全処理方式の中でかなり高い。
評価チャート
