汚水処理技術の事例紹介と評価
[メタン発酵処理(浄化処理)]
1.処理施設の概要(企業からの情報に基づき作成したものである)
企 業 名
株式会社タクマ
処理方法
メタン発酵処理+消化液浄化処理
適応畜種
豚舎ふん尿混合汚水
問い合わせ先・担当者
水処理技術部 入江直樹
TEL:06-6483-2715 FAX:06-6483-2765
お問い合わせ:irie@takuma.co.jp
処理施設の概略フロー

処理施設の概要
ふん尿混合の豚舎汚水をメタン発酵処理によりバイオガスを発生させ、マイクロタービン(発電機)等の燃料として利用する。消化液は浄化設備により脱窒を行い、河川放流する処理システムである。
処理施設の特徴
- メタン発酵槽は汚泥濃度を高めて運転できる構造となっており効率が良い。
- 浄化設備は担体に安価なカキ殻、コークスを使用した接触酸化法。
- 脱窒のための炭素源としてメタノールではなく廃食油を、色度除去のための活性炭に鶏糞活性炭を用いるなどランニングコストの低減化を目指している。
- 発生するバイオガス利用により、プラントで必要とする電気、熱を賄うことができ、余剰が出れば畜舎で使用することが可能である。
- 中〜大規模向け処理施設として適応し易い。
- 河川放流の水質規制に対応することができる。
処理施設の実施状況
- 1. 畜種、飼養規模
- :豚舎汚水、母豚400 頭規模
- 2. ふん尿の排出方法
- :ふん尿混合方式
- 3. 希釈倍率
- :豚舎汚水量に対し約0.6 倍量の希釈水を使用
- 4. 処理水の処置
- :河川放流
排出汚水量・BOD 量
- 1. 排出汚水量
- :29 m3/日(7.3L/頭・日)
- 2. 排出汚水B O D 量
- :588kg /日(147g /頭・日)
- 3. 排出汚水BOD 濃度
- :30,000mg/L(設計計画値)
固液分離の方法
- 1. 固液分離機の機種
- :スクリュープレス(ふん尿原水、余剰汚泥共通)
- 2. 凝集剤の使用
- :余剰汚泥の分離に高分子凝集剤(添加量1%/ SSkg)
- 3. S S 除去率
- :約25%
- 4. 分離固形物水分
- :約75%
高度処理方法
無し
水質処理性能
曝気槽BOD 容積負荷量:0.25kg /m3・日
|
発酵槽投入汚水 |
消化液 |
浄化処理水 |
除去率 |
VS mg/L |
25,000 |
10,000 |
− |
− |
SS mg/L |
23,000 |
8,000 |
5 |
99.9 |
COD mg/L |
10,000 |
6,000 |
80 |
99.2 |
BOD mg/L |
30,000 |
3,000 |
5 |
99.9 |
T-N mg/L |
3,000 |
3,000 |
50 |
98.3 |
NH3-N mg/L |
1,500 |
2,000 |
3 |
− |
T-P mg/L |
800 |
700 |
6 |
99.2 |
処理経費
- 1. 処理施設の建設費
- :建設費の合計(15,000 万円)、年償却費(900 万円)
- 2. 維持管理費
- :維持管理費の合計(電力費+薬品費+修繕費= 1,100 万円/年)
- 3. 回収エネルギー費
- :電力、熱の合計(610 万円)
- 4. 処理経費の合計
- :母豚1 頭当たり(3.48 万円)、出荷豚1 頭当たり(1,737 円)
導入に当たっての留意点
- 脱窒のための炭素源として使用する廃食油などが安定して入手できることが必要である。
- メタン発酵で回収したエネルギーを牧場側で無駄無く使用できることが、メリットを出すために必要な条件である。
2.評価結果(評価委員会による評価結果)
総合評価
- メタン発酵槽には、搾汁液を投入するため、高い発酵効率と少量の汚泥の発生が期待されるが、汚泥発生量には注意が必要である。
- 消化液の処理を低コスト化するために、廃食油の添加や活性炭の使用を考えているが、これらの添加量の調整や入れ換えなどのための点検や管理が必要となる。
- ガス発生量が低下した場合のメタン発酵槽の加温など維持管理が必要である。
- 高度処理を付加した処理システムであり処理経費は全処理方式の中でやや高いが、エネルギーの収益がさらに見込めると有利である。また、メタン消化液の浄化後放流をシステムに組み込んだ点は評価される。
評価チャート

 前処理設備 |
|
 メタン発酵槽(3) |
 メタン発酵槽(1) |
|
 消化脱離液浄化設備(1) |
 メタン発酵槽(2) |
|
 消化脱離液浄化設備(2) |