汚水処理技術の事例紹介と評価

[ 浄化処理(ふん尿分離)]

1.処理技術の概要(企業からの情報に基づき作成したものである)

企 業 名

株式会社モリプラント

処理方法

活性汚泥変法(膜分離型・硝化・脱窒活性汚泥法+脱色処理法)

問い合わせ先・担当者

本 社 技術部 上中 保
〒545-0011 大阪市阿倍野区昭和町2-3-3
TEL:06-6627-2381 FAX:06-6627-2385

九州支店 技術営業部 原口 策真、佐藤 広行
〒899-5215 鹿児島県姶良郡加治木町本町171
TEL:0995-63-9393 FAX:0995-63-9394

お問い合わせE-mail:info@moriplant.co.jp
技術を参照できるURL:http://www.moriplant.co.jp/

畜産経営の概要

1. 飼養畜種・飼養規模
肥育豚(母豚750頭、全飼養頭数約8,000頭)
2. 畜舎内ふん尿分離の方法(ふん尿分離またはふん尿混合方式)
ふん尿分離方式、ボロ出し率約70%(ただし離乳豚舎のみふん尿混合方式)
3. 施設の所在地:広島県

処理施設の概略フローシート

処理施設の概要

1. 技術の名称(製品名、型式の区分)
豚舎汚水の膜分離型活性汚泥・脱窒・脱色処理施設(MPMF-11型)
2. 従来機種の型式・名称(従来機種の改善・改良・仕様変更等の場合)
新規(従来機種の改善・改良・仕様変更等ではない。)
3. 技術のシステム構成
 システム構成はフローシートに示すように、汚水と余剰汚泥中の有機性及び無機性浮遊物の大半を凝集・固液分離して活性汚泥(脱窒、硝化)処理し、膜分離処理後の高濃度に濃縮した活性汚泥有機性浮遊物(MLVSS)を処理槽(脱窒槽)に戻して循環させる汚水処理方式である。また、脱色処理として膜分離槽に活性炭を添加している。(特願2007-252893)
 
4. 主機となる設備(システムの場合)
フローシート中、凝集分離脱水機・脱窒槽・硝化槽・膜分離槽・活性炭供給装置を中心とする汚水処理工程

技術の新規性と特徴

@ 新規性
汚水を脱窒・硝化処理する前に有機性および無機性浮遊物の大半を凝集させて固液分離を行う方式と、膜分離処理により高濃度に濃縮した活性汚泥を脱窒槽に循環させる方式の組み合わせにより、外部から水素供与体の有機炭素源を添加することなく、効率的に脱窒処理を行うことができるシステム技術である。
膜分離槽に活性炭を添加して脱色する方式をシステムに組み込むことで、脱色後の活性炭を分離するための凝集剤添加装置や沈殿槽が不要となり、設備費の低減が可能である。
A 特徴
あらかじめ凝集・固液分離処理することで、活性汚泥浮遊物(MLSS)中のMLVSSの濃度を高めることができるので、脱窒・硝化処理などの生物学的処理を効率よく行うことができる。
高濃度に維持されたMLVSSは、膜分離槽内でさらに高濃度に濃縮されて脱窒槽に循環されるため、外部から水素供与体として有機炭素源を添加しなくても硝化・脱窒処理などの生物学的処理が極めて効率よく行える。
高濃度のMLSSを脱窒槽に循環させることで、少ない循環量で効率の良い脱窒が可能となり、設備費および維持費を低減できる。
膜分離槽内では、精密ろ過膜(MF膜)の細孔径と活性炭の粒径の差を利用して、活性汚泥混合液に活性炭を供給して脱色処理することが可能であり、高分子凝集剤の添加装置や沈殿槽が不要で設備費を軽減できる。

技術の適用範囲

豚舎、牛舎汚水の安定的なBOD、窒素等の除去及び色度対策として排水基準の厳しい地域でも有効な技術である。なお、畜産排水に限らず、一般の有機性廃水処理にも適用できる。

処理施設の概要

1. 処理施設の設置年月
2007年2月

2. 汚水処理施設の処理能力および実処理量

処理能力42.6m3/日、実処理量42.6m3/日

3. 処理対象汚水

ボロ出し後の豚舎汚水

4. 汚水処理施設の設置面積

施設設置面積約300m2(別途モニタリング施設約180m2

5. 施設の運転にかかわる日常作業量

運転管理の作業量:1時間・人/日

6. 処理水の放流先(処理水放流の場合)

支川〜湖〜1級河川

7. 堆肥化施設併設の有無(分離固形物、余剰汚泥の処理)

堆肥化施設の有無:あり(脱水ケーキ受け入れ)

8. その他必要な付帯処理設備

特になし

設計諸元と設計概要(排出汚水の汚濁負荷量等)

1. 排出汚水量:42.6m3/日

2. 家畜1頭1日当たりの汚水量:5.4L/頭・日

3. 固液分灘の方法

豚舎汚水と余剰汚泥は同一スクリュープレスによる分離脱水法
(豚舎汚水および余剰汚泥とも高分子凝集剤をSS当たり0.56%添加)
(SS回収率98.8%、分離固形物の水分80%)

4. 排出汚水のBOD濃度と負荷量(1頭1日当たりのBOD量)

9,880mg/L、421kgBOD/日(53g/頭・日)

5. 希釈の要否

無希釈処理

6. 放流先の要否

流域水路に放流

7. 槽容量と設置面積

@ 汚水1m3/日当たりの槽容量 :19.4m3(滞留日数:19.4日)
A 汚水1m3/日当たりの設置面積等:4.2m2

8. 高度処理の有無および高度処理の方式

(1) 窒素除去
硝化・脱窒法(水素供与体不足時のみメタノール添加)
(2) リン除去
凝集分離によるリン除去(除去率90%以上・通常の前処理段階で除去)
(3) 脱色
活性炭添加(300mg/L)による色度除去
(4) 膜分離
MF(精密ろ過)膜による分離
(5) その他高度処理法
モニタリング槽における生物ろ過処理
(6) その他必要な付帯処理設備
特になし

9. 水質処理性能(設計値)

  流入水質 処理水質 除去率等
BOD 9,888mg/L 8mg/L以下 99.9%以上
COD 5,350mg/L 80mg/L以下 98.6%以上
SS 25,750mg/L 10mg/L以下 99.96%以上
T-N 3,620mg/L 80mg/L以下 98.0%以上
T-P 970mg/L 8 mg/L以下 99.2%以上
色度 20以下

10. 施設の機能(機能調査例)

(1) 2次処理(活性汚泥法等)の機能調査例
脱窒槽流入水量:46.3m3/日
BOD容積負荷量:0.23kg/m3・日(脱窒槽、硝化槽を含む)
  脱窒槽投入汚水 膜分離処理水 除去率% 排水基準値
SS mg/L 110 1未満 99.1以上 60
COD mg/L 850 110 87.1 90
BOD mg/L 5,600 10 99.8 70
T‐N mg/L 1,410 60 95.7 120
T‐P mg/L 30 8.7 71.0 16
(2) 高度処理の機能調査例
処理水量:39.4m3/日
BOD容積負荷量:kg/m3・日
  2次処理水 高度処理水 除去率%
SS mg/L 1未満 2  
COD mg/L 110 5.5 95.0
BOD mg/L 10 2 80.0
T‐N mg/L 60 3.7 93.8
T‐P mg/L 8.7 0.43 95.1

処理経費(応募施設の実績または試算値)

1. 建設費

@ 凝集分離・生物処理工程 146,600千円
A 高度処理工程(脱色処理および生物ろ過工程) 14,600千円
B 施設建設費の合計 161,200千円

2. 減価償却費

@ 凝集分離・生物処理工程   15,968千円/年
A 高度処理工程 1,767千円/年
B 施設償却費の合計 17,735千円/年

3. 維持管理費

@ 凝集分離・生物処理工程   6,308千円/年
A 高度処理工程 950千円/年
B 維持管理費の合計 7,258千円

4. 年間処理経費(施設償却費と維持管理費合計)

@ 凝集分離・生物処理工程   22,276千円/年
A 高度処理工程 2,717千円/年
B 年間処理経費の合計 24,993千円/年

5. 処理コスト原単位

@ 建設コスト: 処理能力1 m3/日当たり 3,784千円
母豚1頭当たり 214.9千円
出荷豚1頭/年当たり 10.7千円
A ランニングコスト: 処理汚水量1 m3当たり 0.46千円/日
母豚1頭当たり 9.6千円/年
出荷豚1頭当たり 480円
B 定格電力: 処理汚水量1 m3当たり 1.4kW
出荷豚1頭当たり 0.004kW
C 燃料使用量: 使用なし
D 薬剤使用量: 処理汚水量1 m3当たり 0.18千円/日
出荷豚1頭当たり 0.18千円/年
E 希釈水量: 使用なし

6. 10年スパンの主要な定期点検、交換部品等

機器 点検・交換 点検・交換頻度 点検・交換
費用(概算)
耐用年数 員数 本体価格
ポンプ・
ミキサ等
分解点検 3年 10万円 8年 2 1,400万円
分離脱水機 分解点検 5年 10万円 15年 2 1,100万円
ブロワー 分解点検 3年 50万円 8年 2 200万円
MF膜 交換 5年 300万円 5年 一式 1,100万円
膜用チューブ類 交換 3年 50万円 3年 一式 50万円

導入に当たっての留意点

処理コストを削減して浄化処理能力を高めるためには、家畜から排せつされた汚水中のふんが溶解して汚水濃度が高くなる前に、速やかに前処理(凝集分離脱水)を行うことが大切である。

納入実績(納入物件の諸元、納入年次)

類似施設の納入実績なし

応募技術の適用可能畜種および畜産以外の適用可能原材料

(1) 適用可能畜種
乳用牛、豚の畜舎汚水に対応可能。
(2) 畜産以外の適用可能原材料
各種有機性排水に対応可能。

2. 評価結果(評価委員会による評価結果)

総合評価

  1. 凝集分離による前処理、膜分離法によるMLSSの高濃度化、活性炭による色度除去など、高度処理を比較的コンパクトに装置化している。
  2. 膜分離活性汚泥法の採用により炭素源無添加で窒素除去率99.7%を達成するなど高い処理性能を維持しているが、BOD/N比等の炭素源無添加処理の検証が必要になる。
  3. 膜の利用によりMLSS濃度を高めてばっ気槽の容量を減容化している。また、特殊な工事や工法を必要としていない。
  4. 前処理で凝集分離を組むことにより、膜の洗浄回数が半年に1回程度と維持管理等操作性が簡略化されている。
  5. 処理規模はやや大きいものの活性炭を利用した高度処理であっても、出荷豚あたりの処理経費は約1,000円/頭程度であり、普及可能である。

評価チャート

評価年月日  2008/11/12

浄化処理施設全景

凝集分離脱水機

脱窒槽、硝化槽

脱色用活性炭供給装置

モニタリング設備

放流水