汚水処理技術の事例紹介と評価

[浄化処理(ふん尿混合)]

1.処理技術の概要(企業からの情報に基づき作成したものである)

企 業 名

有限会社 シーエルプラント

処理方法

その他の活性汚泥変法(膜分離活性汚泥法)

適応畜種

パーラー排水

問い合わせ先・担当者

有限会社 シーエルプラント 斎藤榮吉
〒020-0147 岩手県盛岡市大館町21番3号
TEL:019-646-5450  FAX:019-646-5419
技術を参照できるURL:http://www.ac.auone-net.jp/~clplant/

処理技術の概要

1. 技術の名称(製品名、型式の区分)
パーラー排水浄化システム「サンデリクリーン」
2. 従来機種の型式・名称(従来機種の改善・改良・仕様変更等の場合)
該当なし
3. 技術のシステム構成
システム構成はフローシートに示すとおりである。
@ スクリーンポンプ槽よりスクリーンに送水し、固液分離した後、原水槽へ送水する。
A 原水槽から2つの濃調槽へ交互に送り(特許出願中)、1日分の排水の濃度を完全に均一化した後、ばっ気槽へ送水する。
B ばっ気槽の活性汚泥により排水を浄化する。
C 汚泥と処理水を平膜により分離した後、放流する。

処理施設の概略フロー

処理技術の特徴

  1. 汚泥と処理水を平膜により分離するため、従来の活性汚泥法にある汚泥の流出が阻止される。
  2. 膜分離により、従来法より汚泥濃度を上げられるため、高負荷排水に強い。
  3. 膜分離により、従来法より汚泥濃度を上げられるため、ばっ気槽の容積は1/3程度で済み、沈殿槽も不要となるため省スペースになる。
  4. 孔径0.4μの平膜を通過することにより、大腸菌の流出が阻止される。
  5. 平膜により、従来の膜にみられる維持管理の手間やコストを省ける。
  6. 独自の処理工程により、排水濃度を完全に均一化するため、無薬注、無中和装置でパーラー排水の濃度変動を解消できる。
  7. 独自の処理工程により、排水濃度を完全に均一化するため、パーラー排水の濃度変動を解消し、処理性能が安定する。
  8. DOセンサーにより、ばっ気量を自動でコントロールする。電気代の節約ができ、過ばっ気による泡の大量発生を阻止できる。  
  9. 排水に1.0〜1.3%程度の廃棄乳が混入しても対応可能である。

技術の適用範囲

牛舎で、特に濃度変動の大きいパーラー排水。なお、畜産排水に限らず、一般の有機性排水処理にも適用できる。  

畜産経営の概要

1. 飼養畜種・飼養規模 
乳用牛(搾乳牛135頭、全飼養頭数約260頭)
2. 畜舎内ふん尿分離の方法(ふん尿分離またはふん尿混合方式) 
フリーストール牛舎
ふん尿混合発酵処理、ボロ出し率約100%
ミルキングパーラー
ふん尿分離方式、ボロ出し率約80%
3. 施設の所在地
北海道

固液分離の方法

自動掻き上げ式バースクリーンによる固液分離法

1. 固液分離機の機種:自動掻き上げ式バースクリーン 
2. 凝集剤の使用の有無:無 
3. 分離性能:SS回収率30% 

処理施設の概要

1. 汚水処理施設の設置年月
2007月5月
2. 汚水処理施設の処理能力および実処理量 
処理能力:4m3/日、実処理量:4m3/日
3. 処理対象汚水 
パーラー排水
4. 汚水処理施設の設置面積
施設設置面積:約25.4m3/日
5. 施設の運転にかかわる作業量
運転管理の作業量:0.11人・日/週
6. 処理水の放流先
シリクニ川 至音更川(1級河川)
7. 堆肥化施設併設の有無(分離固形物、余剰汚泥の処理)
堆肥化施設の有無:有 余剰汚泥一部受け入れ
8. 高度処理設備
該当なし  
9. その他必要な付帯処理設備
特になし 

処理施設の設計概要(排出汚水の汚濁負荷量等)

1. 排出汚水量 
:4 m3/日
2. 家畜1頭1日当たりの汚水量 
:30L/頭・日
3. 排出汚水のBOD濃度と負荷量(1頭1日当たりのBOD量)
2,500mg/L、10kg/日(74g/頭・日)
4. 希釈の要否
独自の処理工程(特許出願中)により1日分の排水貯留、混合して均一化するため、希釈水は不要である。
5. 放流先の要否
流域水路に放流
6. 処理性能(設計値)
@流入水BOD 2,500mg/L
A処理水BOD 120 mg/L以下(性能保証値)
BBOD除去率 95%以上
7. 槽容量と設置面積
@汚水1m3/日当たりの槽容量:4.6m3(4.6Q)
A汚水1m3/日当たりの設置面積:6.34m2 

水質処理性能

ばっ気槽流入水量:4m3/日
BOD容積負荷量 :1.5kg/m3・日
  ばっ気槽流入汚水mg/ L 活性汚泥処理水mg/ L 除去率% 排水基準値mg/ L
SS 1,700 <1 99.9 160
BOD 1,900 0.5 99.9 120
COD 1,100 47 95.7 120
n-Hex 450 <1 99.8 120
TN 140 4.3 96.9 60
TP 30 0.68 97.8 8


処理経費

1. 建設費合計 16,000 千円
2. 年償却費合計 1,221 千円/年
3. 維持管理費合計 148 千円/年
4. 乳用牛1頭当たりの経費 10.1 千円
5.10年スパンの主要な定期点検、交換部品等
機器 点検・交換 点検・交換頻度 点検・交換費用(概算) 耐用年数 員数 本体価格
スクリーンポンプ 点検 1年 10年 1 8万円
スクリーン 点検 1年 10年 1 40万円
ポンプ 点検 1年 10年 4 24万円
ブロワ 交換 2年 1万円 15年 4 67万円
散気管 点検 1年 5年 一式 5万円
処理水ポンプ 点検 1年 15年 1 8万円
平膜 交換 3年 4万円 5〜7年 一式 50万円
DOセンサー 交換 1年 1.7万円 1年 1 1.7万円

導入に当たっての留意点

  1. 月に1回程度、余剰汚泥の引抜があるため、還元する草地あるいはラグーン、堆肥舎等が必要である。
  2. 排水の負荷を減らすためと配管の詰まりを防ぐため、パーラー室内で出たふんはある程度除去してから床洗浄をする必要がある。(ただし、システム変更によりふん混入も処理可能。)

適用可能畜種および適用可能原材料

1. 適用可能畜種
乳用牛、育成牛、特に濃度変動の大きいパーラー舎の排水に対応可能。
2. 畜産以外の適用可能原材料
各種有機性排水に対応可能

2.評価結果(評価委員会による評価結果)

総合評価

  1. 膜を利用していることからSSや有害微生物の流出も併せて防止できる。また、間欠ばっ気により窒素低減も期待できる。  
  2. 当処理施設はBOD、T-N、SSの除去については原理が明らかであり、運転条件が適切であれば性能は維持できる。  
  3. 膜の利用によりMLSS濃度を高めばっ気槽容積を小さくしている。また、特殊な工事や工法を必要としていない。  
  4. 膜のメンテナンスには手間とコストがかかるが、本処理施設は現状では低廉となっているものの長期的な継続チェックの必要がある。  
  5. 低コスト化の工夫はされているが、酪農家においては負担が大きくさらなるコスト低減化が望まれる。

評価チャート

評価年月日
            

サンデリクリーン全景(K牧場)

サンデリクリーン全景(T牧場)

平成18年豪雪(多い日はこの倍以上降りました)

平膜ユニット

平膜サンプル(写真は使用済みの物)

原水と処理水(K牧場)

原水と処理水(T牧場)

放流先の状況(K牧場)

放流先の状況(T牧場)