汚水処理技術の事例紹介と評価

[浄化処理(パーラー排水)]

1.処理技術の概要(企業からの情報にもとづき作成したものである)

企 業 名

株式会社 楢崎製作所

処理方法

(1)排水処理技術:『流動担体生物膜処理設備』

適応畜種

パーラー排水

問い合わせ先・担当者

株式会社 楢崎製作所(正)設計部 猪野屋 勝 
              (副) 〃  更谷 庸輔
部所代表者名:小桜 義隆
〒051-8570 室蘭市崎守町385番地
TEL:0143-59-5132 FAX:0143-59-3906
技術を参照できるURL:http://www.narasaki-ss.co.jp/
お問い合わせE-mail:お問い合わせはホームページから

処理技術の概要

1. 技術の名称(製品名、型式の区分)
搾乳舎排水の流動担体生物膜処理設備(主要設備:“パラクリン”)
2. 従来機種の型式・名称(従来機種の改善・改良・仕様変更等の場合)
該当なし
3. 技術のシステム構成
フローシートに示すように、排水を生物酸化処理後、固液分離し処理水は放流又は再利用、固形分は槽外へ排出するシステム。実処理工程では、異物を取り除いた原水を投入、濃度を平準化し、流量調整しつつ、酸化硝化工程を経て沈殿分離により汚泥と清澄水に分離する。清澄水は公共用水域に放流あるいは再利用される。
4.主機となる設備(システムの場合):
フローシート中、沈澱槽・流量調整槽・曝気槽・沈澱分離槽を中心とする排水処理工程。
5.技術の適用範囲
搾乳舎の雑排水のBOD、COD、SS除去方法として有効です。なお、畜産排水に限らず、一般の有機性排水処理にも適用できます。
6.処理施設の概略フロー
7.技術の新規性と特徴
新規性
当該技術は酪農家向けに、従来の一般的生物処理設備(躯体・地上設置)をコンパクトな地下埋設形状とし、イニシャルコストの低減・維持メンテの簡便性を図ったものです。
“安い・きれい・手間いらず”をコンセプトに計画すると共に、乳成分分解を目的とした菌群(パラバイオ)を馴致し採用しています。
特徴
曝気槽投入原水のBOD濃度が概ね2,000mg/L以下で、きわめて安定した処理性能が得られます。
さまざまな性質の原水を平準化しているため安定的な処理が出来、95%以上のBODが除去されます。
担体を使用することにより、曝気槽が小さくなり、製作・設置のイニシャルコストが低減します。
維持管理は設備の運転がほとんど自動化されているので、機械等の異常が発生しない限り日常の技術的管理は始業終業点検(巡回)程度です。
原水を生物処理しているので、少量の分離汚泥が発生します。

畜産経営の概要(応募施設)

1. 飼養畜種・飼養規模
乳牛(搾乳牛68頭、全飼育乳牛頭数約120頭)
牛舎構造・牛舎面積
合成木製梁・カラートタン張屋根壁:約800m2
飼育舎・堆肥舎含めた全体 :約2000m2
2. 牛舎内ふん尿分離の方法(ふん尿分離)
ふん尿分離方式:バーンクリーナー
3. 施設の所在地
北海道

処理施設の概要(応募施設)

1. 排水処理施設の設置年月
2008年4月
2. 排水処理施設の処理能力および実処理量
処理能力:2.0m3/日、実処理量:1.5m3/日(推定)
3. 処理対象汚水
ラインミルカー洗浄水・バルカー洗浄水・洗濯排水・床洗浄水
4. 排水処理施設の設置面積
施設設置面積:約20m2
5. 施設の運転にかかわる作業量
運転管理の作業量:0.01人日/週
6. 処理水の放流先(処理水放流の場合)
サッチャルベツ川(側溝経由、一級河川十勝川水系)
7. 堆肥化施設併設の有無(余剰汚泥の処理)
堆肥化施設の有無:あり(堆肥舎内での、糞尿湿潤敷藁のホイールローダー切り替えしによる発酵)
余剰汚泥受け入れ:あり(尿溜めに投入、嫌気発酵後圃場散布)
8. その他必要な付帯処理設備:該当なし

処理施設の設計概要(応募施設排出汚水の汚濁負荷量等)

1. 排出汚水量 
2m3/日
2. 家畜1頭1日当たりの汚水量 
30ℓ/頭・日
3. 排出汚水のBOD濃度と負荷量(1頭1日当たりのBOD量)
2,000mg/L、4kg/日 (60g/搾乳頭数・日)
4. 希釈の要否
希釈水は不要
5. 放流先の要否
流域水路に放流(あるいは雑洗浄水として再利用)
6. 処理性能(設計値)
①流入水BOD2,000mg/L、②処理水BOD120mg/L以下(性能保証値)
③BOD除去率94%以上
7. 槽容量と設置面積
①排水1m3/日当たりの槽容量 :6m3(6Q)
②排水1m3/日当たりの設置面積:10m2

水質処理性能(応募施設)

ばっ気槽流入水量:1.5m3/日
BOD容積負荷量:1.0kg/m3・日
単位:mg/L ばっ気槽投入汚水 流動担体処理水 除去率% 排水基準値
SS 500 10 98.0 160
COD 500 20 96.0 120
BOD 1,000 20 98.0 120

高度処理の機能調査:該当なし



処理経費(応募施設の標準価格)

1.建設費
建設費 12,400千円
減価償却費 (建設費×0.9÷ 15年=年当たり償却費)
a.土木・建築費(⑦ ×0.9÷ 15年) 234千円/年
b.機械設備費 (③ ×0.9÷ 7年) 1,093千円/年
c.施設の減価償却費合計 234千円/年+1,093千円/年=1,327千円/年
2.維持管理費
維持管理費 125千円/年
3.年間処理経費
施設償却費と維持管理費 1,327千円+125千円=1,452千円
処理経費原単位(乳牛頭数当たり)
乳牛1頭当たりの償却経費 : 1,327円/年÷120頭=11千円/年・頭
乳牛1頭当たりの維持管理経費: 125千円/年÷120頭=1千円/年・頭
牛乳生産1トン当たりの処理経費: 3千円/m3(約600トン/年)
処理水量1m3当たりの処理経費 : 2千円/m3(約730m3/年)
4. 10年スパンの主要な定期点検、交換部品等
機器 点検・交換 点検・
交換頻度
点検・交換
費用(概算)
耐用年数 員数 本体価格
汚水
ポンプ等
分解点検 5年 3万円 10年 3 5万円
ブロワー 分解点検 3年 5万円 5年 1 15万円

導入に当たっての留意点

①異物は予め除去することが必要です。
②廃棄乳は投入しないものとし、別ルートの計画が必要です。
③設備は曝気装置の運転維持が肝要です。

納入実績

畜種 規模 納入年次 件数
乳牛 120頭 2008 1
乳牛 150頭 2009 2
乳牛 70頭 2009 1
乳牛 510頭 2010 1
乳牛 520頭 2010 1
(1月現在受注済、製作中)
(1月現在受注済、製作中)

本方式の適用可能畜種および適用可能原材料

(1)適用可能畜種
各種畜舎の洗浄排水に適用可能です。
(高濃度排水は除きます)
(2)畜産以外の適用可能原材料
各種有機性排水に対応可能

2.評価結果(評価委員会による評価結果)

総合評価

1. 繋ぎ飼い牛舎の搾乳関連排水の処理施設で、流動性の担体を用いた生物膜方式により安定処理に配慮した処理施設である。
2. 排水はパイブライン等の洗浄排水で低濃度であり、消毒剤の混入があるが良好な処理性能である。
3. 処理施設はFRP製でコンパクトにまとまっている。
4. パイプライン等排水であり負荷量が低いこともあって前汚泥や余剰汚泥の排出が殆どなく、日常の運転は機械点検程度の簡便な管理である。
5. 処理コストは、パイプライン等洗浄排水処理としては普通程度ある。

評価チャート

評価年月日 2009/11/17

            


納入例 写真(北海道十勝支庁更別村)