堆肥化技術の事例紹介と評価

[乾燥・堆肥化複合施設]

1. 処理施設の概要(企業からの情報に基づき作成したものである)

企業名

株式会社岩手県南クボタ

堆肥化処理方式の区分

直線型攪拌・天日乾燥・堆肥化複合方式

問い合わせ先・担当者

特機事業推進部 高橋陽悦
〒023-0003 岩手県奥州市水沢区佐倉河字鐙田38-1
TEL:0197-23-8111 FAX:0197-22-2620
技術を参照できるURL:http://www.iwatekennan.kubota.ne.jp
お問い合わせ:info@iwatekennan.gr.kubota.co.jp

基本設計数値等

1. 施設の概要: 
牛ふんを浅型の攪拌乾燥機にて水分を60〜70%に落とし、ピットにて堆積発酵処理する施設
2. 処理方式: 
直線型攪拌乾燥・発酵方式(浅型)
3. 適用畜種: 
乳牛(30頭)
4. 原料処理量: 
1.7トン/ 日(720トン/ 年、敷料を含む)
5. 副資材: 
イナワラ・モミガラ・おが屑
6. 調整水分(投入水分): 
投入82% → 68%
7. 全発酵期間: 
90日
8. 施設所在地: 
岩手県

処理施設の概略フロー

施設の特徴

  1. 浅型の乾燥機と天日の利用で水分を落とすので、副資材等の調整材は少なくてすむ(冬季、梅雨時期は必要)。
  2. 処理施設費とランニングコストが安価である。
  3. 1つのハウスで乾燥槽と発酵槽(ピット)があるため、平地の場合土盛りが必要になる。
  4. ふん尿を投入する場合浅型のため、堆肥を20cm 以下にならす作業が必要である。

施設の稼働状況(実施例)

1. 畜  種: 
乳牛
2. 飼養規模: 
乳牛(成牛)30頭
3. 畜舎構造: 
つなぎ牛舎
4 設置年月日: 
1999年2月
5. システム構成: 
本施設はフローチャートに示した様に堆肥乾燥発酵処理施設です
6. 堆肥生産量: 
240トン/ 年
7. 管理者数: 
常勤者1人
8. 畜ふんの搬送: 
トラクタローダーにより搬送
9. ふん尿の分離: 
牛舎の尿溝(副尿溝)にて分離
10. 脱臭装置の有無: 
無し

原料の前処理

1. 搾汁処理の有無: 
無し
2. 異物の分別対策: 
無し
3. 原料の破砕: 
無し

堆肥原料と投入量・生産量

1. 施設能力(投入原料ベース): 
720トン/ 年
2. 家畜ふん原料: 
1.7トン/ 日
3. 水分調整材料: 
0.3トン/ 日
4. 混合ふんの重量および水分: 
2.0トン/ 日
5. 処理日数  : 
乾燥槽20日 1次処理槽40日 2次処理槽30日
6. 堆肥化原料の混合および投入作業: 
トラクタバケットローダーにより投入、機械攪拌
7. 1次処理および2次処理の運転方法: 
乾燥:攪拌機械にてピットへ堆積 1日6〜8回運転
発酵:堆積型発酵、トラクタローダーにて攪拌 1回/ 週
8. 堆肥の貯留と製品化設備: 
9. 堆肥の年平均生産量  : 
240トン/ 年(バラ50トン/ 年、10kg 袋詰め5,000袋)
10. 製品堆肥の販売単価  : 
4,000円/m3、300円/ 袋
11. 堆肥成分分析例 
(単位:水分は湿物値、他は乾物値)
水分% 灰分% pH EC mS/cm 全炭素% 全窒素% C/N 比 リン酸% カリ% 発芽指数
16.4 1.20 13.7 1.36 2.27

処理経費

1. 施設建設費: 
7,500千円
  減価償却費(土木20年、簡易施設12年、機械7年耐用):計603.6千円/ 年
2. 維持管理費(電力費・副資材費・修繕費の合計): 
380千円/ 年
3. 処理経費の合計(年償却費+維持管理費): 
983.6千円/ 年
4. 原料1トン当たりの処理経費: 
1,366円/ トン

導入に当たっての留意点

  1. 機械は自動運転で動くが、水分の状況確認等の管理作業が必要である。
  2. 設置場所は、日当たりの良い所、出来るだけ長さを取れる所を選定する。

本方式の適用可能な畜種

乳牛、肉用牛、豚、採卵鶏ほか

他畜種への主な納入実績例

適用実績例: 
約40ヶ所 1999年〜2005年
1. 岩手: 
乳牛 20頭〜30頭 (1999年〜2004年)9ヶ所
2. 宮城: 
乳牛 70頭 (2001年)
3. 宮城: 
乳牛 20頭〜30頭 (2003年〜2004年)4ヶ所
4. 岩手:
乳牛 100頭

2. 評価結果(評価委員会による評価結果)

総合評価

  1. 主原料は乳牛ふん1.7トン/ 日の堆肥化施設である。
  2. 処理方法は、原料ふんのハウス乾燥処理(20日)と乾燥ふんの堆積発酵法(70日)の組み合わせであり、合わせて90日程度の処理期間があるが、良質堆肥生産のためにはまだ短い感がある。水分が高くなると堆肥は塊となりやすい。
  3. この処理法の最も留意する点は、ハウス乾燥の水分蒸発量が夏季と冬季で5倍程度の違いがあり、冬季の水分蒸発量に合わせると非常に広い面積が必要になるため、夏季の乾燥ふんをストックしたり他の副資材を確保するなど現場に合わせた条件設定が重要である。
  4. おが屑などの水分調整材の入手が困難な条件では有効であるが、広いハウス面積が必要である。本事例でも水分調整材として少量のイナワラを使用している程度である。
  5. 処理コストは普通であるが、堆肥の販売でさらにコスト低減が期待できる。
  6. ハウス乾燥処理では,原料ふんの水分が高くなると臭気の発生が多くなり,水分蒸発量も低下するので留意する必要がある。
  7. ハウス乾燥処理がうまくできれば取り扱いやすくなるが、労力はそれほど低減化できない。

評価チャート

評価年月日

3. 施設説明写真


原料ストック場

スロープより投入

レーンにて攪拌移動

ピットにて堆積発酵

発酵中(堆肥内温度約80℃)

2次処理用堆肥舎
(約45〜60日仕上げ)