堆肥化技術の事例紹介と評価

[乾燥・堆肥化複合施設]

1. 処理施設の概要(企業からの情報に基づき作成したものである)

企業名

株式会社 サタケ

堆肥化処理方式の区分

火力乾燥+通気型堆積方式

問い合わせ先・担当者

環境システム部 西山隆博
〒739-0043 広島県東広島市西条西本町2-30
TEL:082-420-8625 FAX:082-420-0003
技術を参照できるURL:http://www.satake-japan.co.jp/ja/
お問い合わせ:kankyo_system@satake-japan.co.jp

基本設計数値等

1. 施設の概要: 
火力乾燥(高速発酵促進機)により水分調整を行い、発酵に適した状態に調整する。その後
通気堆積発酵で堆肥化処理する施設
2. 処理方式: 
(前処理:高速発酵促進機)+(発酵処理:通気堆積型発酵槽)
3. 適用畜種: 
乳牛(300頭)
4. 原料処理量: 
5トン/ 日(5,475トン/ 年、敷料を含む)
5. 副資材: 
不要(高速発酵促進機の機内に残した乾燥済み原料で水分を調整)
6. 調整水分(投入水分): 
86%(高速発酵促進機で発酵に適した水分に調整)
7. 全発酵期間: 
30日
8. 施設所在地: 
(実証試験施設)

処理施設の概略フロー

施設の特徴

  1. おが屑やモミガラ等の水分調整材が不要(近年入手困難になり、価格が高騰してきている)。また、高水分原料でも固液分離等行う必要なく排水処理も不要である。
  2. 水分調整材等の増量材が入らず、発酵期間が短いため施設の建築面積が小さい。
  3. 火力乾燥により発酵に適した水分・温度に調整されるため、冬季や寒冷地でも安定した、堆肥生産が可能である。
  4. 高温による乾燥処理により有害な病原菌や雑草種子を死滅させる。
  5. 火力乾燥の燃料は白灯油を使用する。

※ 上記特徴については、(財)農産業振興奨励会による実証試験済み。 
    (公表試験報告書有り)

施設の稼働状況(モデルプラント)

1. 畜  種: 
乳牛
2. 飼養規模: 
乳牛300頭(50kg/ 頭・日、水分86%)
3. システム構成: 
本施設は、フローチャートに示したように、高速発酵促進機で高水分原料を発酵に適した状態に前処理をし、通気堆積型発酵槽で発酵を行う。原料置場、高速発酵促進機(10m3タイプ 3台)、通気堆積型発酵槽、製品貯槽で構成される。
4. 堆肥生産量: 
乳牛ふんの堆肥:1,000トン/ 年
5. 管理者数: 
常勤者1人
6. 畜ふんの搬送: 
バケットローダーにより搬送
7. ふん尿の分離: 
無し(火力乾燥による)
8. 脱臭装置の有無: 
無し(オプション)

原料の前処理

1. 搾汁処理の有無: 
無し(高速発酵促進機で火力乾燥が可能)
2. 異物の分別対策: 
肉眼により手作業で分別
3. 原料の破砕:: 
無し

堆肥原料と投入量・生産量

1. 施設能力: 
堆肥原料と投入量・生産量1,000トン/ 年。(製品生産量)
2. 家畜ふん原料: 
主原料 乳牛ふん15トン/ 日、水分86%。
3. 水分調整材料: 
不要。(高速発酵促進機の機内に残した乾燥済み原料で水分を調整)
4. 混合ふんの重量および水分: 
重量33.8トン/ 日、水分74.8%、容積重約0.75トン/m3(原料+乾燥済み原料)
※高速発酵促進機排出時:重量6.1トン/ 日、水分65.8%、容積重約0.65トン/m3
5. 処理日数: 
前処理(高速発酵促進機)1日(6時間/ バッチを1日2バッチ稼動)、 発酵処理(通気堆積型発酵槽)30日
6. 堆肥化原料の混合および投入作業: 
バケットローダーにより投入、機械攪拌
7. 前処理および発酵処理の運転方法: 
前処理:高速発酵促進機、6時間/ バッチ 自動乾燥(1日当たり2バッチ運転)
  発酵処理:通気堆積型発酵槽、バケットローダー攪拌1回/ 週
8. 堆肥の貯留と製品化設備: 
堆肥貯留槽(2か月分堆積可能)
9. 堆肥の年平均生産量: 
1,000トン/ 年
10. 製品堆肥の販売単価: 
3,000円/ トン
11. 堆肥成分分析例 
肉牛ふんを原料とし、同方式で行った際の実測値を示す。
(単位:水分は湿物値、他は乾物値)
水分% 灰分% pH EC mS/cm 全炭素% 全窒素% C/N 比 リン酸% カリ% 発芽指数 石灰% 苦土% アンモニア
ppm
47.2 13.1 8.9 2.3 45.4 3.5 13.1 1.9 3.0 96.7 8.9 2.3 2,260

処理経費

1. 施設建設費: 
152,800千円、減価償却費(施設20年、機械7年耐用):15,418千円/ 年
2. 維持管理費(電力費・燃料費・修繕費・薬品費の合計): 
16,250千円/ 年(365日/ 年稼働)
3. 処理経費の合計(年償却費+維持管理費): 
31,668千円/ 年
4. 原料1トン当たりの処理経費: 
5,784円/ トン

導入に当たっての留意点

  1. 原料水分が計画より高くなると、前処理の乾燥時間が計画より長くなる。

本方式の適用可能な畜種

乳牛、肥育牛、豚、採卵鶏、ブロイラー(※特に高水分原料に有効)

他畜種への主な納入実績例

1. 鹿児島: 
ブロイラー(186千羽)(2004年度)(敷料に再利用)
2. 佐 賀: 
肥育牛(1,500頭)+ブロイラー(2,652百羽)+採卵鶏(120百羽) (2004年度)
3. 栃 木: 
乳牛ふん尿混合(450頭)+乳牛尿のみ(370頭)+豚ふん尿混合(220頭)
(2004〜2006年度 3か年度事業)
(施設全体処理量 100トン/ 日程度のうち高水分原料を処理。)

2. 評価結果(評価委員会による評価結果)

総合評価

  1. 原料は乳牛ふん15トン/ 日の比較的大型の堆肥化施設である。
  2. 処理法の特徴は、副資材を使わずに、乳牛ふんを火力乾燥して水分調製する点である。
  3. 処理方法は、生の乳牛ふんを水分66%まで火力乾燥し、強制通気式の堆肥舎で30日間発酵させ、貯蔵兼熟成槽で2か月間貯蔵する。
  4. 乳牛ふんのみを強制通気式の堆肥舎で1か月間発酵させるので、品質上の問題はない。出来上がった堆肥のカリ濃度も乾物値で3%と低い値となっている。
  5. 通常、乳牛ふんのみを堆肥化する場合は、ハウス乾燥で水分調製することが多いが、本事例は火力乾燥のため設置面積が少なく、冬期間の乾燥不良の問題も発生しない。また、副資材を使わないため堆肥舎の面積も小さくなっている。
  6. 発酵管理はローダー切り返しの堆積方式と同様である。
  7. 処理経費は、乳牛1頭あたり8万円/ 年と非常に高額であり、堆肥の販売金額を差し引いても1頭あたり7万円の経費となっている。このコストは尿を入れない場合であり、尿を入れるとさらに高額になる。
  8. 本火力乾燥装置は、おが屑など副資材の入手困難地域で、ハウスでは乾燥能力が期待できない地域への導入を想定としている。処理経費が非常に高いという問題がある。
  9. 今後、環境問題から、化石燃料で家畜ふんを乾燥することの是非も問われてくると考えられる。できるだけ副資材を用いて化石燃料の消費量を少なくする方策も考える必要がある。

評価チャート

評価年月日

3. 施設説明写真


高速発酵促進機(SRA −1000E)

投入

撹拌軸(乾燥槽内)

乾燥前処理物
(原料+機内残留=水分70〜75%程度)

乾燥後処理物(水分60〜65%程度)

排出