堆肥化技術の事例紹介と評価

[開放型攪拌方式]

1. 処理施設の概要(企業からの情報に基づき作成したものである)

企業名

コクブ商事株式会社

堆肥化処理方式の区分

直線型・ロータリー式+堆積方式

問い合わせ先・担当者

システム部 國分俊作
〒964-0868 福島県二本松市舘野4-235
TEL:0243-48-3888 FAX:0243-48-2902
技術を参照できるURL:http://www.kokubunnojyo.com/
お問い合わせ:info@kokubunnojyo.com

基本設計数値等

1. 施設の概要: 
牛ふんをロータリー式発酵槽で堆肥化処理する施設
2. 処理方式: 
ロータリー式発酵槽+堆積式発酵槽+ハウス乾燥施設
3. 適用畜種: 
肉牛(450頭)
4. 原料処理量: 
8.2トン/ 日(3,723トン/ 年、敷料を含む)
5. 副資材: 
おが屑・戻し堆肥
6. 調整水分(投入水分): 
64.9%
7. 全発酵期間: 
115日
8. 施設所在地: 
福島県

処理施設の概略フロー

施設の特徴

  1. ロータリー式発酵槽で好気性発酵による高温(70℃ 前後)で発酵・切り返しするため、雑菌・雑草・害虫の発生が無い、高品質の堆肥が生産できる。
  2. 発酵槽が150cm と深いため、100cm や50cm に比べ保温性があり、施設面積が少なく、単位面積あたりの堆肥生産量は大きい。
  3. 堆肥生産が季節にあまり関係しない。
  4. スクープ式に比べシンプルな機械構造のため、メンテナンスが容易で電力費等のランニングコストは安価である。
  5. スクープ式に比べ日々の清掃は容易である。
  6. ウレタン車輪の採用により、工事費が安価となる。
  7. 処理施設の運転はほとんど自動化されているため、機械の異常が発生しない限りほとんど確認程度の見回りで可能であり、日常の技術的管理は不要である。
  8. 戻し堆肥を利用し牛ふん尿水分を調整しているので、水分調整のためのおが屑は少なくすむ。

施設の稼働状況(実施例)

1. 畜  種: 
肥育牛
2. 飼養規模: 
肥育牛450頭
3. 畜舎構造: 
フリーバーン牛舎
4. 設置年月日: 
1998年6月
5. システム構成: 
本施設は、フローチャートに示したように、ロータリー式発酵槽を中心に、副資材・製品貯槽、ハウス乾燥設備、袋詰め設備等で構成される。
6. 堆肥生産量: 
肉牛ふんの堆肥1,545トン/ 年
7. 管理者数: 
常勤者0.7人
8. 畜ふんの搬送: 
バケットローダーにより搬送
9. ふん尿の分離: 
無し
10. 脱臭装置の有無: 
無し

原料の前処理

1. 搾汁処理の有無: 
無し
2. 異物の分別対策: 
肉眼により手作業で分別
3. 原料の破砕: 
無し

堆肥原料と投入量・生産量

1. 施設能力(投入原料ベース): 
2,993トン/ 年
2. 家畜ふん原料: 
主原料肉用牛ふん7.2トン/ 日、食品残渣1トン/ 日
3. 水分調整材料: 
おが屑2.0トン/ 日、戻し堆肥1.2トン/ 日
4. 混合ふんの重量および水分: 
重量11.4トン/ 日、水分64.9%、容積重約0.8トン/m3
5. 処理日数: 
スクープ式攪拌槽25日、堆積型発酵槽90日
6. 堆肥化原料の混合および投入作業: 
バケットローダーにより投入、機械攪拌
7. 1次処理および2次処理の運転方法: 
1次処理:ロータリー式発酵槽、攪拌1回/ 日、自走式(全自動)
2次処理:堆積型発酵槽、バケットローダー攪拌1回/ 2週間
8. 堆肥の貯留と製品化設備: 
堆肥貯留槽、袋詰め機
9. 堆肥の年平均生産量: 
1,545トン/ 年(バラ640トン/ 年、15kg 袋詰め10,600袋)
10. 製品堆肥の販売単価: 
10,000円/ トン(5,000円/m3)、450円/ 袋
11. 堆肥成分分析例 
(単位:水分は湿物値、他は乾物値)
水分
灰分
pH EC mS/cm アンモニア−N
ppm
全炭素
全窒素
C/N
リン酸
カリ
発芽
指数
石灰
苦土
亜鉛
ppm

ppm
酸素消費量
μg/g・時
40.42 22.18 8.71 4.33 2.04 39.45 2.04 19.34 1.42 2.57 91 3.17 0.98 165 37

処理経費

1. 施設建設費: 
52,640千円、減価償却費(施設20年、機械7年耐用):3,615千円/ 年
2. 維持管理費(電力費・副資材費・燃料費・修繕費の合計): 
4,468千円/ 年
3. 処理経費の合計(年償却費+維持管理費): 
8,083千円/ 年
4. 原料1トン当たりの処理経費: 
2,701円/ トン

導入に当たっての留意点

  1. 投入水分の調整が重要である。
  2. 水分低下が著しい場合には、尿汚水を散布できる設備を設ける。
  3. 半年から1年に1度ブロワー清掃の実施が望ましい。
  4. 脱臭設備も設置が可能である。

本方式の適用可能な畜種

乳牛、豚、採卵鶏、ブロイラーほか

他畜種への納入実績例

1. 福 島: 
採卵鶏5万羽(2001)
2. 宮 城: 
肥育豚600頭(2001)
3. 北海道: 
乳牛100頭・肥育牛200頭混合(2002)
4. 北海道: 
乳牛86頭・育成牛60頭(2004)
5. 福 島: 
乳牛150頭(2004)
6. 福 井: 
乳牛500頭・生ゴミ5トン(2004)

2. 評価結果(評価委員会による評価結果)

総合評価

  1. 肥育牛等のふん尿を深型ロータリー式の開放直線型発酵施設(処理日数25日)と堆積型堆肥舎(処理日数90日)を組み合わせたシステムで処理している。
  2. ロータリー式撹拌装置の深さは1.5m と1.8m の2種類から選べるが、実稼働システムは1.5m を採用している。
  3. 実稼働システムでは、牛舎から搬出する牛ふんの水分が低く、施設への負荷が小さい。導入にあたっては原料ふんの水分に注意が必要である。
  4. 戻し堆肥で容積重を調節するようになっているが、ロータリー式発酵施設と堆肥舎では製品水分を目標まで低下させることが難しく、乾燥施設が必要である。実稼働システムでは床暖房のハウス乾燥施設を導入して対応している。
  5. 施設費、運転コストは中程度である。
  6. 深型のロータリー型発酵槽のため、施設面積は少なくて済むが、乾草など長物が含まれると機械に負荷がかかるので注意が必要である。
  7. 施設導入に当たっては畜産環境アドバイザーなど専門家に助言を求めるのが望ましい。

評価チャート

評価年月日

3. 施設説明写真


施設全景
(手前:ハウス乾燥施設、右奥:1次処理槽)

2次処理槽(約90日間熟成)
(2週間に1度切り返し)

1次処理槽
(幅4 m ×長さ65m ×深さ1.5m)

堆肥分別機
(袋詰め用のみ分別する)

ロータリー式攪拌機
(1日に1回攪拌、温度70℃ 前後まで上昇)

袋詰め機
(秤で計量後シーラーにて袋を閉じる)