堆肥化技術の事例紹介と評価

[開放型攪拌方式]

1. 処理施設の概要(企業からの情報に基づき作成したものである)

企業名

株式会社ミライエ

堆肥化処理方式の区分

通気型堆積方式+直線型・スクープ式+直線型ロータリor 堆積

問い合わせ先・担当者

環境部 田村直哉
〒690-0021 島根県松江市矢田町250番地167
TEL:0852-28-0001 FAX:0852-31-3981
技術を参照できるURL:http://www.miraie-corp.com
お問い合わせ:kankyou@miraie-corp.com

基本設計数値等

1. 施設の概要: 
牛ふんを通気型発酵槽、スクープ式発酵槽で発酵した後、戻し堆肥生産用をロータリーで、生産堆肥用を堆肥舎で発酵する施設
2. 処理方式: 
通気堆積型発酵槽+スクープ式発酵槽+3次処理:(1)堆積型発酵槽(2)ロータリー式発酵槽
3. 適用畜種: 
乳用牛190頭、繁殖和牛150頭、肥育牛160頭(合計500頭)
4. 原料処理量: 
14.75トン/ 日(5,384トン/ 年、敷料を含む)
5. 副資材: 
おが屑5,100kg/ 日、戻し堆肥1,399kg/ 日
6. 調整水分率: 
68%
7. 全発酵期間: 
ライン1:41日、ライン2:83日
8. 施設所在地: 
島根県

処理施設の概略フロー

施設の特徴

  1. 面倒な水分調整作業を機械化している。
  2. ドラム型装置でふんを粒状化した後、通気型発酵槽で温度誘導してから発酵する方式であるが、臭気の拡散が少なく、また季節変動がほとんどない。
  3. 後段の発酵部分をスクープ等で行っているため設備点数は多いが、人的作業は比較的少ない。
  4. 本施設は比較的規模の大きい堆肥センターであり、大量の副資材の調達が困難であること、生産堆肥の需給バランスを考慮し、水分調整材の大半を戻し堆肥で賄っている。
  5. ハウス構造の建築物では、コストと耐久性に優れたフッ素フィルム樹脂を使用している。

施設の稼働状況(実施例)

1. 畜  種: 
乳用牛、繁殖和牛、肥育牛
2. 飼養規模: 
乳用牛190頭、繁殖和牛150頭、肥育牛160頭(合計500頭)
3. 畜舎構造: 
4. 設置年月日: 
2004年3月
5. システム構成 : 
水分調整撹拌装置、通気堆積型発酵槽、スクープ、ロータリー
6. 堆肥生産量: 
肉牛+乳牛ふんの堆肥2,444トン/ 年
7. 管理者数:常勤者1人 
8. 畜ふんの搬送:密閉コンテナ車で集荷
9. ふん尿の分離: 
分離しない
10. 脱臭装置の有無: 
無し

原料の前処理

1. 搾汁処理の有無: 
無し
2. 異物の分別対策: 
肉眼による確認で、手作業で分別
3. 原料の破砕: 
無し

堆肥原料と投入量・生産量

1. 施設能力: 
7,756トン/ 年(投入原料ベース)
2. 家畜ふん原料: 
牛ふん5,384トン/ 年
3. 水分調整材料: 
おが屑5.1トン/ 日、戻し堆肥1.4トン/ 日
4. 混合ふんの重量および水分: 
21.25トン/ 日、水分率68%、容積重700kg/m3
5. 処理日数: 
ライン1:41日、ライン2:83日
6. 堆肥化原料の混合および投入作業 : 
ローダーによる投入、機械撹拌
7. 1次処理および2次処理の運転方法: 
1次処理:通気堆積型発酵槽、
2次処理:スクープ式発酵槽
8. 堆肥の貯留と製品化設備: 
生産した堆肥は貯留庫へ貯留する。袋詰め作業は無し。
9. 堆肥の年平均生産量: 
2,810トン/ 年(バラ2,730トン/ 年、15kg 袋詰め5,300袋/ 年)
10. 製品堆肥の販売単価: 
3,125円/ トン、260円/ 袋
11. 堆肥成分分析例 
(単位:水分は湿物値、他は乾物値)
水分% 灰分% pH EC mS/cm 全炭素% 全窒素% C/N 比 リン酸% カリ% 発芽指数 有機物含量%
51 9.1 2.7 1.0 2.03 2.70 82

処理経費

1. 施設建設費: 
207,622千円、減価償却費(施設20年、機械7年耐用):19,293千円/ 年
2. 維持管理費(計画値:電力費・副資材費・修繕費の合計): 
7,091千円/ 年
3. 処理経費の合計: 
26,384千円/年
4. 原料1トン当たりの処理経費: 
4,852円/ トン

導入に当たっての留意点

  1. 2次処理以降を堆肥舎に変えて設備費の低減を図ることが出来る。

本方式の適用可能な畜種

肥育牛、乳牛

他畜種への主な納入実績例

1. 鳥取: 
乳用牛40頭
2. 福岡: 
肉用子牛1,500頭
3. 鳥取: 
競走馬150頭+乳用牛33頭
4. 佐賀: 
集落排水汚泥

2. 評価結果(評価委員会による評価結果)

総合評価

  1. 主原料は肉牛ふん尿および乳牛ふん14.7トン/ 日の堆肥センターである。
  2. 処理方法の特徴として、おが屑および戻し堆肥を副資材とし、牛ふんと副資材を混合機で混合後、スクープ式攪拌機で堆肥化する。ロータリー式攪拌機による乾燥施設を備えている。
  3. 処理方法は、牛ふんと副資材を混合機で混合、堆積後、数時間の通気と数日間の堆積による1次処理、スクープ式攪拌機による2次処理、堆積発酵法による3次処理の組合せにより80日程度の発酵を行う
  4. 副資材として使用する戻し堆肥はロータリー式攪拌機により天日乾燥を行う。
  5. 各施設の操作性は簡便であり、特別な管理技術を要しない。
  6. 混合機は高水分のふん尿であっても副資材と均一に混合するが、堆肥化促進の効果は明らかではない。
  7. 設計計算は概ね妥当であるが、冬季は低水分戻し堆肥の生産が困難であることから、夏季の戻し堆肥保管施設が必要である。
  8. 処理体系が複雑で施設建設費は高額であるが、畜産農家で採用する場合には割愛できる部分もある。
  9. 設置面積に余裕がある場合は、スクープ攪拌機の稼働面積を増やし、1次処理で完熟化を図る方が作業性は有利となる。また、スクープ、ロータリーを各1レーンとすることで施設費の圧縮が可能となる。
  10. 混合機は開発から日が浅く、耐用年数は不明である。
  11. 本施設の特徴は、ふんを攪拌発酵槽に投入する前処理として、水分調整の省力化および通気性確保のために、ふんと副資材を混合する装置を前置していることにある。メーカーは、この装置で数日間通気堆積した後の処理方法は、攪拌槽の形式にこだわらないとしている。混合装置の堆肥化促進効果とコスト対効果を今後検証する必要がある。

評価チャート

評価年月日

3. 施設説明写真


水分調整撹拌装置
(畜ふんと水分調整材の混合)

1次処理槽
(温風による発酵初期の温度誘導)

スクープ槽(2次処理)

堆肥舎(3次処理)

ロータリー槽(発酵乾燥)