堆肥化技術の事例紹介と評価

[開放型攪拌方式]

1. 処理施設の概要(企業からの情報に基づき作成したものである)

企業名

株式会社ホソヤ

堆肥化処理方式の区分

回行型・ロータリ式+直線型・ロータリ乾燥

問い合わせ先・担当者

技術部 久保田満冶
神奈川県綾瀬市落合南6−8−37
TEL:0467−78−1881 FAX:0467−76−1887
技術を参照できるURL:http://www1.odn.ne.jp/~abg02370/index.htm
お問い合わせ:hosoya@k-hosoya.co.jp

基本設計数値等

1. 施設の概要: 
長円型発酵槽に投入した鶏ふんを一部の戻し堆肥と共に攪拌機で攪拌しながら発酵槽内部で移動させ、堆肥化処理する施設
2. 処理方式: 
回行型発酵槽による攪拌式発酵処理+2次処理・乾燥エリア
3. 適用畜種: 
採卵鶏(10万羽)
4. 原料処理量: 
10トン/ 日(最大15トン/ 日)(3,650トン/ 年、敷料を含む)
5. 副資材: 
発酵鶏ふん
6. 調整水分(投入水分): 
58%
7. 全発酵期間: 
40日(1次処理と2次処理・乾燥処理の合計)
8. 施設所在地: 
静岡県

処理施設の概略フロー

施設の特徴

  1. 処理能力が大きく、発酵槽一基で10〜15万羽の生鶏ふんが処理可能
  2. 長さ40〜60m、幅8 m で両端を円形状とした回行型発酵槽
  3. 発酵鶏ふん(種菌)の循環利用による高い発酵温度と発酵効率の維持
  4. 2ローター式(特許取得)による鶏ふんの十分な撹拌
  5. 各処理設備間の搬送は自動化運転されたコンベアでも可能
  6. 形の整った粒状で肥効の高い有機肥料を生産

施設の稼働状況( 実施例)

1. 畜  種: 
採卵鶏
2. 飼養規模: 
18万羽(成鶏18万羽、育成鶏3.5万羽)(回行型発酵槽2基)
3. 畜舎構造: 
ウインドレス鶏舎
4. 設置年月日: 
1990年
5. システム構成: 
本施設の構成として、発酵槽と脱臭装置が存在し、付属設備として2次処理槽・乾燥装置、篩機、袋詰め、コンベア等が備えられている。
6. 堆肥生産量: 
発酵鶏ふん650トン/ 年(エンドレス型発酵槽1基当たり)
7. 管理者数: 
常勤者1人、非常勤者0.5人
8. 畜ふんの搬送: 
バケットローダーおよびコンベア
9. ふん尿の分離: 
分離なし
10. 脱臭装置の有無: 
水洗式脱臭システム

原料の前処理

1. 搾汁処理の有無: 
無し
2. 異物の分別対策: 
無し
3. 原料の破砕: 
無し

堆肥原料と投入量・生産量

1. 施設能力(投入原料ベース): 
3,650トン/ 年(回行型発酵槽1基、環境により増減)
2. 家畜ふん原料: 
鶏ふん10トン/ 日(最大15トン/ 日)
3. 水分調整材料: 
8.7トン/ 日
4. 混合ふんの重量および水分: 
18.7トン/ 日
5. 処理日数: 
14日(40日)(1次処理と2次処理の合計)
6. 堆肥化原料の混合および投入作業: 
バケットローダーまたはコンベアにより投入
7. 1次処理および2次処理の運転方法: 
1次処理:回行型発酵槽、攪拌回数4〜6回/ 日(全自動自走式)
2次処理:発酵・乾燥エリア、攪拌回数6回/ 日(全自動自走式)
8. 堆肥の貯留と製品化設備: 
堆肥貯留槽、袋詰め機
9. 堆肥の年平均生産量: 
650トン/ 年(バラ190トン/ 年、15kg 袋詰め30,600袋/ 年)
10. 製品堆肥の販売単価: 
バルク袋3,400円/ トン、130円/ 袋
11. 堆肥成分分析例 
(単位:水分は湿物値、他は乾物値)
水分% 灰分% pH EC mS/cm 全炭素% 全窒素% C/N 比 リン酸% カリ% 発芽指数 その他有機物%
15〜20 1.8〜2.5 6〜6.5 2.8〜4 65〜70

処理経費

1. 施設建設費: 
39,000千円、減価償却費(施設20年、機械7年耐用):3,176千円/ 年
2. 維持管理費(電力費・薬剤費・修繕費の合計): 
2,800千円/ 年
3. 処理経費の合計(年償却費+維持管理費): 
6,268千円/ 年
4. 原料1トン当たりの処理経費: 
1,717円/ トン

導入に当たっての留意点

  1. 発酵鶏ふんの処理・販売ルートの確保
  2. 発酵時に発生する臭気ガスの処理方法と能力の検討
  3. 運転経費の正確な見積
  4. 原料鶏ふんの量や水分量、季節に合わせた戻し堆肥の量・運転回数の調整

本方式の適用可能な畜種

採卵鶏、ブロイラー、(牛、豚)

他畜種への主な納入実績例

1. 青 森: 
採卵鶏10万羽(2002)(脱臭装置なし)
2. 台 湾: 
採卵鶏12万羽(2002)(脱臭装置なし)
3. 千 葉: 
採卵鶏8万羽(2002)(脱臭装置あり)
4. 神奈川: 
採卵鶏7万羽(2003)(脱臭装置あり)
5. ギリシャ: 
採卵鶏10万羽(2004)(脱臭装置なし)

2. 評価結果(評価委員会による評価結果)

総合評価

  1. 主原料は鶏ふん10トン/ 日で、戻し堆肥およびストックした堆肥で水分調整する堆肥化施設である。
  2. 処理方式は開放・回行型発酵槽を用いた28日間の1次処理(副資材としての戻り鶏ふん)と6日〜12日の2次処理の組み合わせとなっている。
  3. 鶏ふんに戻し堆肥を混合しているが、設計上、鶏ふんおよび戻し堆肥それぞれの1日平均分解率を大きく見積もっている。このため、発熱量、水分蒸散量ともに、実態より過大になっていると思われる。
  4. 冬季対策として、ブロワーの圧縮熱によって水分蒸発を促すことになっているが、2次処理の期間を十分に長く採らなければ、所定の水分蒸散量を確保できない恐れがある。
  5. 脱臭施設では、アンモニアと硫化水素を、水洗と微生物分解の組み合わせで除去することになっているが、硫化水素除去のメカニズムが示されていない。また、アンモニアは硝化、脱窒による除去としているが、硝化槽と脱窒槽の諸元が示されておらず、今回は、脱臭効果の検証ができなかった。
  6. 畜産環境アドバイザーなど専門家の助言を求め、適正規模の装置を設計することが望ましい。

評価チャート

評価年月日

3. 施設説明写真


発酵処理施設外観

エンドレス型発酵槽

攪拌機本体

コンベアによる生ふん投入

脱臭設備外観

水洗式脱臭の水処理設備