堆肥化技術の事例紹介と評価

[開放型攪拌方式]

1. 処理施設の概要(企業からの情報に基づき作成したものである)

企業名

株式会社 環境テクノエンジニアリング

堆肥化処理方式の区分

堆積型・通気スクリュー式+堆積方式

問い合わせ先・担当者

傳明地洋基
〒699-3676 島根県益田市遠田町1670番地3
TEL:0856-24-1474 FAX:0856-22-7221
技術を参照できるURL:http://www.kktec.jp
お問い合わせ:info@kktec.jp

群馬営業所
〒379-1207 群馬県沼田市利根町利根赤城原1994-128 所長 吉野 弘幸
TEL:0278-53-2898 FAX:0278-53-3304
お問い合わせ:hiro-yoshi@pol.kannet.ne.jp

基本設計数値等

1. 施設の概要: 
畜ふんを堆積(約2.5〜3 m)し、タテ型スクリューにてエアーを入れ、堆肥化処理をする施設
2. 処理方式: 
タテ型スクリュー式堆積発酵+堆積発酵
3. 適用畜種: 
牛・豚・鶏(牛の場合200〜2,000頭)
4. 原料処理量: 
4,453トン/ 年(敷料を含む)
5. 副資材: 
モミガラ、おが屑
6. 調整水分(投入水分): 
65%
7. 全発酵期間: 
65〜70日
8. 施設所在地: 
埼玉県

処理施設の概略フロー

施設の特徴

  1. スクリュージェッターは高圧エアー粉砕を使用していますので、発酵槽内堆肥の粒子が10mm 位に粉砕され5日〜7日に一度、機械を廻すだけで充分なエアー供給が出来る。このため、堆積高が2.5m 以上であっても酸素不足で温度が上昇しにくくなることはありません。上部より1 m 位下部で75℃位の温度上昇が得られます。
  2. 運転は制御盤内の操作で自由に目的の場所を撹拌しますので、堆肥の仕上りを観察しながらスクリューの位置を移動させることができます。
  3. スクリューの材質はオールステンレス製なので耐用年数が永く、故障しにくい構造となっています。
  4. スクリュー幅65cm、堆積高2.5m、撹拌速度毎分28cm、撹拌回数毎分20回程度で運転します。したがって、1時間当り27.3m3の撹拌、8時間/ 日運転で約220m3を撹拌できます。

施設の稼働状況( 実施例)

1. 畜  種: 
肥育牛F1メス
2. 飼養規模: 
肥育牛480頭
3. 畜舎構造: 
10〜12頭仕切×40ストール
4. 設置年月日: 
2004年9月
5. システム構成: 
大型ショベル車にて堆肥舎幅14m、長さ30m、高さ3 m にそのまま投入、堆積する。
6. 堆肥生産量: 
牛ふん堆肥2,100トン/ 年
7. 管理者数: 
常勤者2人、非常勤者1人
8. 畜ふんの搬送: 
バケットローダー(大型)による搬送
9. ふん尿の分離: 
自然混合、戻し堆肥またはおが屑利用
10. 脱臭装置の有無: 
無し

原料の前処理

1. 搾汁処理の有無: 
無し
2. 異物の分別対策: 
手作業で分別
3. 原料の破砕: 
無し

堆肥原料と投入量・生産量

1. 施設能力(投入原料ベース): 
2,500トン〜2,800トン/ 年
2. 家畜ふん原料: 
おが屑、戻し堆肥再利用3〜6トン/ 日
3. 水分調整材料: 
おが屑または戻し堆肥
4. 混合ふんの重量および水分: 
重量35トン/ 日、水分60%、容積重0.6kg/m3
5. 処理日数: 
65〜70日
6. 堆肥化原料の混合および投入作業: 
バケットローダーにより投入
7. 1次処理および2次処理の運転方法: 
1次処理:堆積発酵5〜7日に1回×4〜5回=35日
2次処理:堆積発酵7〜10日に1回×2〜3回=30日後、熟成
8. 堆肥の貯留と製品化設備: 
発酵堆肥舎より販売または戻し堆肥に使用
9. 堆肥の年平均生産量: 
2,500トン/ 年(バラ)
10. 製品堆肥の堆肥の販売単価: 
2,000円/ トン(1,000円/m3
11. 堆肥成分分析例 
(単位:水分は湿物値、他は乾物値、発芽指数は小松菜)
水分% 灰分% pH EC mS/cm 全炭素% 全窒素% C/N 比 リン酸% カリ% 発芽指数
51.2 7.9 7.63 19.01 1.15 16.5 1.59 1.74 95〜98

処理経費

1. 施設建設費: 
33,600千円(堆肥舎11,080千円、機械代22,520千円)、減価償却費(施設20年、機械7年耐用):3,300千円/年
2. 維持管理費の合計(電力費・副資材費・修繕費の合計): 
833千円/ 年
3. 処理経費の合計(年償却費+維持管理費): 
4,133千円
4. 原料1トン当たりの処理経費: 
1,968円/ トン

導入に当たっての留意点

  1. 水分68〜65%が堆積発酵の原則である。
  2. 床部にブロワーを設施、水分35%位迄にし、戻し堆肥を100%利用するように計画する。

本方式の適用可能な畜種

乳牛、肉牛、豚、採卵鶏、ブロイラー、農産物廃材ほか

他畜種への主な納入実績例

1. 埼玉: 
肥育牛480頭(2004)
2. 栃木: 
肥育牛2,000頭(2004)
3. 群馬: 
肥育牛3,000頭(2003)
4. 群馬: 
搾乳牛500頭(2004)

2. 評価結果(評価委員会による評価結果)

総合評価

  1. 原料は肥育牛ふん尿9.6トン/ 日で、副資材として戻し堆肥1.8トン/ 日を混合して処理する堆肥化施設である。
  2. 処理方式は堆肥舎切り返しによる50日間の処理となっている。
  3. 設計上では水分蒸散量が少なく、乾燥した堆肥が得られないものとなっているが、現状では設計値よりも少ない処理量(4トン/日)であるため、堆積高さも1.8m 程度と余裕のある運転が可能となっている。このため適正な水分蒸散量が得られている。採用に当たっては畜産環境アドバイザーなど専門家の助言を求め、水分収支を十分に検討しておく必要がある。
  4. スクリュー式攪拌装置は堆積物の移送をともなわない構造で、バケットローダーで原料投入、製品搬出をする必要がある。
  5. スクリューが堆積層を通過すると供給された酸素は速やかに消費され酸素不足に陥るが、負荷量が小さく堆積高さが低ければ酸素不足が深刻化しないこともある。酸素の消費速度は堆肥原料の分解性によるので、分解速度の速い原料にこの方式を適用するときには注意が必要である。
  6. 酸素供給が十分でないと所定の1日平均分解率を達成できないことが危惧される。また、1日平均分解率が小さければ水分蒸発のための発熱量も確保できないことがあると考えられるので導入にあたっては、十分な検討が必要である。
  7. 堆積高さが高くなるときは、スクリュー先端からの通気だけでなく、床面から強制通気するなどの配慮が望ましい。

評価チャート

評価年月日

3. 施設説明写真


投入側
大型ローダー大型ダンプの出入口可能
高さ5.6m 位まで開放

スクリュー先端にエアーノズルがあり
粉砕しながら酸素を注入発酵促進している

高さ2.5m 〜3 m まで堆積撹拌

製品が10mm 内外に粉砕されている

スクリュージェッター全体のすがた

2月の寒い時期で温度75℃ まで上げている(牛ふん)