堆肥化技術の事例紹介と評価

[参考事例(公設試験場の研究用施設)]

1. 処理施設の概要(企業からの情報に基づき作成したものである)

企業名

株式会社モリプラント

堆肥化処理方式の区分

密閉横型攪拌方式+堆積方式

問い合わせ先・担当者

九州支店技術営業部 原口策真
本   社 〒545-0011 大阪市阿倍野区昭和町2-3-3
TEL:06-6627-2381 FAX:06-6627-2385
技術を参照できるURL:http://www.moriplant.co.jp/
お問い合わせ:ホームページから

九州支店 〒899-5215 鹿児島県姶良郡加治木町本町171
TEL:0995-63-9393 FAX:0995-63-9394

基本設計数値等

1. 施設の概要: 
牛ふん、豚ふん、鶏ふんを密閉横型発酵槽で堆肥化処理する施設
2. 処理方式: 
密閉横型発酵槽+堆積式発酵槽
3. 適用畜種: 
乳用牛(26頭)、肉用牛(116頭)、母豚ほか(120頭)、採卵鶏(約5,800羽)
(うち約55%のふんは、既設堆積発酵施設で処理)
4. 原料処理量: 
1.6トン/ 日(600トン/ 年、敷料を含む)
5. 副資材: 
おが屑
6. 調整水分(投入水分): 
70%
7. 全発酵期間: 
60日
8. 施設所在地: 
高知県

処理施設の概略フロー

施設の特徴

  1. ヨーロッパで多数の実績を有するオーストリア国THOENI 社製の密閉横型発酵装置TDM を1次処理装置として使用している。
  2. 1次処理装置は完全に密閉化し、断熱処理により外気温の影響を受けないため、発酵条件を適正に保つことができ、脱臭処理が容易である。また、発酵熱を連続的に計測するモニタリングシステムにより、発酵状態を的確に捉えて送気量をコントロールしながら自動化で堆肥化処理ができるので、作業が大幅に省力化できる。
  3. 1次処理装置の床が前後可動することでゆっくりと原料を攪拌・移動して、発酵初期から終了までの10日間を高温に維持することで、病原性大腸菌や寄生虫類の卵、雑草の種子等を完全に死滅させ、作物の生育阻害物質を分解させる発酵装置で、1次処理の仕上り堆肥は放線菌の量が非常に多くなるのが特徴で、乾燥効率は他社の密閉型発酵槽に比べて少し劣る。
  4. 1次処理装置はコンテナモジュールのため、処理量に応じた増設が容易であり、土木基礎工事および現地組立据付工事の合理化と低コスト化が図れる。

施設の稼働状況( 実施例)

1. 畜  種: 
乳用牛、肉用牛、豚、採卵鶏
2. 飼養規模: 
乳用牛26頭、肉用牛116頭、母豚ほか120頭、採卵鶏約5,800羽
(うち約55%のふんは、既設堆積発酵施設で処理)
3. 畜舎構造: 
乳用牛はスタンチョン式乳牛舎、肉用牛は群飼で踏込み式牛舎
豚はふん尿分離豚舎、採卵鶏は開放低床式鶏舎
4. 設置年月日: 
2000年2月
5. システム構成: 
本施設は、フローチャートに示したように、密閉横型発酵槽、堆積式発酵槽を中心に、移送混合コンベア、堆肥貯留槽、脱臭設備等で構成される。
6. 堆肥生産量: 
牛ふん、豚ふん、鶏ふんの混合堆肥205トン/ 年
7. 管理者数: 
常勤者1人
8. 畜ふんの搬送: 
ボブキャットにより搬送
9. ふん尿の分離: 
無し
10. 脱臭装置の有無: 
乾式の酸添着モミガラ充填カラム+土壌脱臭処理装置

原料の前処理

1. 搾汁処理の有無: 
無し
2. 異物の分別対策: 
肉眼により手作業で分別
3. 原料の破砕: 
無し

堆肥原料と投入量・生産量

1. 施設能力(投入原料ベース): 
600トン/ 年
2. 家畜ふん原料: 
肉用牛ふん2トン/ 日、乳用牛ふん0.6トン/ 日、豚ふん0.3トン/ 日、採卵鶏ふん0.6トン/ 日(全原料中、約55%は、既設堆積発酵施設で処理)
3. 水分調整材料: 
おが屑0.35トン/ 日
4. 混合ふんの重量および水分: 
重量2トン/ 日、水分70%、容積重0.7トン/m3
5. 処理日数: 
1次処理(密閉横型発酵槽)10日、2次処理(堆積型発酵槽)50日
6. 堆肥化原料の混合および投入作業: 
ボブキャットにより投入、機械攪拌
7. 1次処理および2次処理の運転方法: 
1次処理:密閉横型発酵槽、攪拌1回/ 日、フロア可動式(全自動)
2次処理:堆積型発酵槽、ホイルローダー攪拌1回/ 週
8. 堆肥の貯留と製品化設備: 
堆肥貯留槽(1か月分)
9. 堆肥の年平均生産量: 
バラ205トン/ 年
10. 製品堆肥の販売単価: 
販売は行わず、場内利用および周辺農家へ無償提供
11. 堆肥成分分析例 
(単位:水分は湿物値、他は乾物値)
水分
灰分
pH EC
mS/cm
全炭素
全窒素
C/N
リン酸
カリ
発芽
指数
亜鉛
mg/kg

mg/kg
アンモニア
ppm
51.9 7.8 5.8 29.6 2.19 13.5 0.78 2.8 450 110 2,120

処理経費

1. 施設建設費: 
54,780千円、減価償却費(施設20年、機械7年耐用):6,785千円/ 年
2. 維持管理費(電力費・副資材費・修繕費・薬剤費の合計): 
2,236千円/ 年
3. 処理経費の合計(年償却費+維持管理費): 
9,021千円/ 年
4. 原料1トン当たりの処理経費: 
15,000円/ トン

導入に当たっての留意点

  1. 本装置は水分の乾燥より発酵を主とした装置であるため、水分調整材はバガスや剪定枝葉などのような通気性の富んだ副資材が適している。
  2. 密閉横型発酵装置TDM はオーストリア国トニー社製をベースに、移送コンベア等に当社独自の技術を付加している。標準型の容積は100m3であり、原料の分解率にもよるが滞留期間10日間で12〜15m3/ 日の投入が可能で有り、処理量に応じて発酵装置数を増やす必要がある。
  3. 計画段階で、堆肥の利用目的や散布方法などに合わせた原料および副資材の混合計画、成分調整成材の必要性などについて検討する必要がある。

本方式の適用可能な畜種

乳用牛、肉用牛、豚、採卵鶏、ブロイラーほか

他畜種への主な納入実績例

適用実績: 
無し

2. 評価結果(評価委員会による評価結果)

総合評価

  1. 主原料は家畜ふん1.6トン/ 日(全畜種あり)で、公設研究機関に設置された小規模の実証型堆肥化施設である。
  2. 処理方法は、密閉横型発酵槽による1次処理(10日)と堆積発酵法による2次処理(50日)との組み合わせであり、60日間の処理期間があるがやや短い。本事例では堆肥貯留槽も含めると、最後には良質堆肥が生産できるものと考える。
  3. 施設の特徴は、密閉横型発酵槽の底板が前後にスライドして切り返しと移送ができる特殊な構造になっていることである。
  4. おが屑(敷料)と戻し堆肥できちんと水分調整できている。
  5. 脱臭装置も設置されている。
  6. 規模に比較して処理コストがかなり高くなっており、農家に設置する堆肥化施設としては現状では参考になりにくい。
  7. 施設管理者の労力はかなり削減できる。

評価チャート

評価年月日

3. 施設説明写真


密閉横型発酵槽全景

原料移送混合コンベア(手前)

発酵槽内