発酵床豚舎の戻し利用型の管理方法

 肥育豚舎で戻し利用型の発酵床の場合の管理方法です

  1. 豚房内の洗浄と消毒
     床材や豚を入れる前に、豚房内を必要に応じて洗浄・消毒します。発酵床の場合、寄生虫症や坑酸菌症などの病原菌が蔓延しやすいので、前の使用済み床材をそのまま次の肥育に持ち越さないようにするべきです。特に、前の肥育で病死豚が出たり、内臓廃棄率が高かったりした時には、よく洗浄して消毒します。消毒には、石灰塗布がよく用いられています。

  2. 床材の投入
     戻し堆肥を投入しない場合は、新しい床材を60cmの深さに投入します。戻し堆肥を入れる場合には、戻し堆肥を45cmの深さに投入し、平らにならした上に60cmまで、新しい床材を重ねます。2年に1回程度の頻度で、床材を全て新しい床材に更新するようにします。更新を怠ると、床が硬くなり、乾燥と泥濘が極端に生じるようになって、床の管理に手間がかかるようになります。
     床材は、一般にオガクズが使われていますが、バーク、モミガラ、麦桿等を混合している例もあります。粒子が小さすぎると、粉塵の元になったり、空隙ができずにふんの分解が進みにくくなるので、床材に適しません。
     戻し利用型は、床材を使い回すため、全量排出型にくらべて、床材の検討が行いにくいです。オガクズ以外の床材を使用する場合には、床の状態や堆肥化の発酵温度に十分注意しながら検討するようにしてください。

  3. 豚の導入
     寄生虫と抗酸菌に感染していない豚を導入してください。繁殖豚に駆虫薬を投与し、ツベルクリンテストで陽性(抗酸菌を保有している可能性が高い)の繁殖豚を廃棄するようにします。これらの繁殖豚での対処ができない場合は、導入豚に駆虫薬を投与してください。抗酸菌症によると思われる内蔵廃棄率が高いようならば、まず床材を全て交換して肥育してみて、それでも下がらないようならば、導入豚の持ち込みを疑うようにしてください。

  4. 肥育中の管理
     床の増減と、床表面の泥濘部分と乾燥部分の状況を見ながら管理します。
    1)床が目減りした場合
     肥育開始直後に圧密が進むことで目減りします。平らにならして深さが55cm以下になるようならば、新しい床材を追加して60cmの深さにします。

    2)床が増えた場合
     冬期の発酵が進みにくい時期に増えやすいです。床を重機で撹拌すると分解が進んで減量します。それでも多いようならば、その分を堆肥舎に排出します。

    3)乾燥しすぎている場合
     夏期ならば水を散布してください。冬期に粉塵が舞うようならば、床材が適していません。床材を一部排出し、適した床材を表面に散布します。

    4)乾燥部分と泥濘部分の分離が激しい場合
     特に支障がなければ、そのままでも良いですが、泥濘部分が広がるようならば、重機で撹拌します。

    5)泥濘化が激しい場合
     床の全体に渡って泥濘化が進んでしてしまった場合は、早急に対処する必要があります。放置すると悪臭が発生します。泥濘化が特にひどい部分を堆肥舎に排出し、新しい床材を加え、床全体を重機で撹拌します。

    6)床の表面が硬くなる場合
     床の表面10cmほどが硬い岩盤のようになるならば、床材を更新する時期が来ています。次のオールアウト後に使用済み床材を全て堆肥として出し、新しい床材に更新してください。

  5. 床材の排出
     豚を出荷後、全ての使用済み床材を堆肥舎に排出します。全体的に撹拌すれば、そのままで発酵温度が上がることが多いです。しかし、水分が多かったり、圧密性が高くて空隙が少ない場合は、副資材の混合が必要です。容積重を目安に、副資材の混合量を判断するといいです。 →適正な容積重を求める
     堆肥化は、堆積して65℃以上になったところですぐに切り返すようにし、少なくとも2回切り返して、3回の堆積とも温度が65℃以上になるようにします。堆積して3日以内に65℃に上がらないようならば、容積重を再調整します。容積重に問題がないならば、熱源が不足しているので、米ぬかや廃食油を堆肥に対して0.5%添加してかく拌するなどして、温度が確実に上がるようにします。

  6. 飼育頭数の検討
     豚舎の規模に示した「発酵床面積」は目安であり、気候、床材の質、床の管理状況によって多少変化します。豚房に入れる豚の頭数を、床の状態や豚の健康状態に十分注意しながら、1頭ずつ増減させ、最適な飼育頭数を検討してください。なお、頭数が多くなるにつれて、床の一部交換や撹拌等の手間が多くかかるようになります。


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